ふきのとう

天気予報ではもう何度か東京にも雪の予報が出ているのを見かけている。

数日前の深夜、うたた寝から起きて外を見たら少しだけ雪が降っていた日があったけれどあれから見てないな。


雪が降ったりインフルエンザのニュースが流れると冬だな、と思うのと同時にここでもやっぱり小学生の頃を思い出す。丁度国語で「ふきのとう」を習っていた時期の事。


インフルエンザで生徒の数が3分の1になってしまって、その数日間に登校した生徒は特別に好きな席に座れたり、授業が進められないから半日かけて友達の似顔絵を描いたりして過ごした。

お休みになってしまった皆には申し訳ないけれど、わたしは今でも思い出せるくらいその数日間どきどきしっぱなしだった。


3,4日経って、生徒の数もだんだん元に戻り始めた頃ようやく「ふきのとう」の授業が再開した。皆が学校に少しずつ戻ってくるあの感じと「ふきのとう」が重なって、不思議な気持ちになったな。

久しぶりに読みたくなって、検索してみた。ここに残しておけばいつでも好きな時に読めるし、思い出せる。



「ふきのとう」  工藤直子


    
夜があけました
朝の光をあびて たけやぶのたけのはっぱが
「さむかったね うん、さむかったね」とささやいてます
雪がまだ少しのこって あたりはしんとしています
どこかがでちいさな声がしました
「よいしょ よいしょ おもたいな」
たけやぶのそばのふきのとうです
雪のしたにすこしあたまをだして 雪をどけようとふんばっています
「よいしょ よいしょ そとがみたいな」

ごめんね、と雪がいいました
「わたしもはやくとけて水になり とおくへいってあそびたいけど」
とうえをみあげます
「でも竹やぶのかげになってひがあたらない」
とざんねんそうです

すまない、と竹やぶがいいました
「わたしたちもはやくゆれておどりたい ゆれておどれば雪に日があたる 
でもはるかぜがまだこない はるかぜがこないとおどれない」
とざんねんそうです

そらのうえでおひさまがわらいました
「おや はるかぜがねぼうしているな 竹やぶも雪もふきのとうもみんなこまっているな」
そこで南をむいていいました
「おーい はるかぜおきなさい」
     
おひさまにおこされてはるかぜは おおきなあくび
それからせのびしていいました
「や、おひさま や、みんなおまちどう」
はるかぜはむねいっぱいいきをすい ふうっといきをはきました
     
はるかぜにふかれて 竹やぶがゆれるゆれるおどる
雪がとけるとける 水になる
ふきのとうがふんばる せがのびる
   
ふかれて ゆれて とけて ふんばって もっこり
ふきのとうがかおをだしました
「こんにちは」
もうすっかりはるです