春に

会社から一年前に5年勤続で頂いた旅行券でようやく旅行に行ってきた。

2泊3日で念願の尾道へ。


来れて良かったどころか、生きていて良かったと感じるくらい素晴らしい旅行だった。

尾道にいる間ずっと、年の始めに感じていた春の事を思い出していた。春を予感させてくれた彼の言葉に嬉しさで溢れ出しそうになった日の事。自分から迎えに行った春はこんなに素晴らしいよって報告したい。


海と山に囲まれたあの町の商店街を何度も往復したこの春の事を、これからずっと持っていられる。その事がきっとこれからわたしをたくさん支えてくれると思う。




旅行から帰った次の日はおじいちゃんの一周忌だった。

お寺さんの話の中で何度も「あの世」と「この世」という言葉を聞いたのだけれど、どちらも温かみと有り難みのある場所だと感じてすごく安心した。表と裏とはよく聞くけれど、それをちゃんとそう思えたのは初めてだった。


あと一年修行したら、おじいちゃんは極楽浄土に行くらしい。極楽浄土と聞いて、ふと「かぐや姫の物語」を思い出した。

それが月なのか何なのかは関係なくて、ただこの世では無いお寺さんの言う極楽のその場所におじいちゃんが行こうと修行をしているなら、わたしはこちらで頑張りますよ、と、帰り際にまたお墓の前で手を合わせた。